作成年月:2024 年 4 月
膿疱性乾癬(GPP)の原因は?
GPPを含む乾癬の発症原因は今のところ明確になっていませんが、遺伝的素因と環境因⼦の相互作⽤により、からだの免疫システムに異常が⽣じることで発症すると考えられています。免疫システムとは本来、細菌やウイルスなど異物の侵⼊を防ぐ重要なシステムですが、なんらかの原因により異常が起きると異物がないのに活性化してしまい、その結果として炎症が起きてしまいます15)。
遺伝的素因とは乾癬を発症しやすい体質のことをいい、環境因子としては感染症、薬剤の使⽤、気候、精神的ストレス、睡眠不⾜‧⾷事などの外的な因⼦と、糖尿病や脂質異常症、肥満などの内的な因⼦などがあります。この遺伝的素因に環境因子が加わることで乾癬が発症‧悪化すると考えられています15)。
また、最近の研究から、乾癬患者さんの免疫システムの異常に「炎症性サイトカイン」という物質が重要な役割を果たしていることがわかってきました。サイトカインとは、細胞間の情報伝達を担う物質で、そのなかでも炎症を引き起こすものを炎症性サイトカインといいます。
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小宮根真弓, ほか. 困ったときに役立つSTEP UP乾癬診療. 東京: メディカルレビュー社; 2019. より作成
GPPの発症にはIL-36という炎症性サイトカインがかかわっていると考えられています。尋常性乾癬の症状がなくGPPを発症した患者さんの多くは、このIL-36の働きを抑える物質(IL-36Ra) を作るIL36RN遺伝子に変異があり、IL-36Raの機能が著しく低下していることが明らかになりました2)15)。また、尋常性乾癬の症状があるGPP 患者さんの一部では、炎症を起こすCARD14遺伝子に変異があり、炎症反応が高まってしまうことも明らかとなっています2)15)。ただ、これらの遺伝子変異もすべてのGPP患者さんで認められるわけではなく、原因は現在のところはっきりとは分かっていません。感染症や妊娠、ストレスなどを契機に皮膚の細胞が分泌する炎症性サイトカインが高熱の原因となり、血液中の白血球を皮膚に呼び寄せて膿疱を形成すると考えられています2)。
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難病情報センター. 膿疱性乾癬(汎発型)(指定難病37)、杉浦一充. 日皮会誌. 2019; 129: 1311-5.より作成
診断・検査はどのように行う?
GPPの診断にあたっては、皮膚症状と全身症状の観察、および皮膚症状が繰り返しあらわれているかどうか、という点が重要となります。また、皮疹部の皮膚の一部をとって検査する皮膚生検も、確実な診断のために行われます。血液検査も炎症の程度や併発症の有無を確認するために行われます。
皮膚生検3)
血液検査の検査項目(例)3)
炎症の程度を評価します。炎症が強くなるほど白血球数は増加します。
炎症の程度を評価します。炎症が強くなるほどCRP値は上昇します。
腎機能障害などの併発症を評価します。
腎機能障害などの併発症を評価します。
GPPはとてもまれな病気であるため、皮膚科医であっても治療経験が少ない場合は、
診断までに時間がかかってしまう可能性があります。
GPPの治療経験が豊富な皮膚科専門医による早期の診断・治療が重要です。
重症度はどのように評価する?
GPPの重症度は、皮膚症状の程度、炎症の程度をスコア化し、その合計点数により軽症、中等症、重症に分類されます。このうち、「中等症以上」または、軽症であっても高額な医療を継続することが必要な患者さんは、難病医療費助成制度の対象となります。
表 GPPの重症度判定
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日本皮膚科学会膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン作成委員会. 日皮会誌©日本皮膚科学会. 2015; 125: 2211-2257.
参考文献
- 杉浦一充. 日皮会誌. 2019; 129: 1311-5.
- 難病情報センター. 膿疱性乾癬(汎発型)(指定難病37) https://www.nanbyou.or.jp/entry/313
- 日本皮膚科学会膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン作成委員会. 日皮会誌. 2015; 125: 2211-57.